昨日の夕方のことです。

診療が終わり、6時半に待ち合わせをしていたのでいつも来て頂いている

屋島タクシーさんに乗って街へでかけました。

タクシーに乗り込むと運転手さんが、「あ、吉本さんやね」と声をかけてくれました。

初めて見る顔の運転手さん。

 

いきなり、「吉本さんのお父さんは松山の方でしょ?」と。

「ええ?そうですが、どうしてご存知なんですか?」

「ぼくね、3年くらい前に、あなたのお父さんを高松駅までこのタクシーでお送りしたよ。

その時のこと印象的で覚えとんや」と。

 

ええ?父のことを覚えている???

もう本当にびっくりした私。

「あのお父さんは元気な?」

「実は1年半前に、脳梗塞で倒れて今はずっと寝ている状態で、失語症になったので

お話もできなくなったんです」と、私。

 

運転手さんは

「そうだったんか~。実はね、お父さんを3年前に乗せた時、ほんまに嬉しそうにあなたの

話をしとったよ。あなたに渡されたおにぎりを車の中で嬉しそうに食べながら

これは、娘が作ってくれたんや~、最後はやっぱり娘や、持つべきものは娘や~」と

駅に着くまでの約20分たらずを本当に嬉しそうに運転手さんに話していたそうです。

 

・・・・おにぎり、で全てを思い出したんです。

そういえば、3年前に吉本のおばあちゃんが亡くなった時に、父が松山から

悪い足をびっこひきながら、一人やってきてくれました。

人付き合いが上手にこなせないタイプの父でしたので、「みんなでご飯を食べましょう」という

お誘いも「わしゃあ、もう松山に帰る、疲れたわ」と言って早々に帰ることになりました。

 

なにせ、足が悪いもので私も心配で、夕飯も食べていないので

それも可哀想で、急きょ、ご飯釜に残ってたご飯に梅干を入れて2個大きなおにぎりを

作ってアルミホイルにつつんで父に渡したことを思い出しました。

おにぎりを渡したときに、父は、「おにぎりなんかいらんわ」とそっけなく言っていました。

 

せっかく来てくれたのに、ろくろく話しもできず一人で帰っていく姿を見送りながら

なんともいえずに寂しい気持ちになった夜のことを思い出します。

 

運転手さんの話を聞いて「おにぎり」で、ぜ~んぶ思い出してしまいました(泣)

せっかくキレイになおしてきた化粧がはげます(--;)

 

でも、なぜ、今この瞬間にこんな話をここで聴けるんだ?とふと考えました。

そういえば、最近バタバタしてて父の顔を見ていないから、「ちゃんと顔を見にいけよ」と誰かが

教えてくれたのかな・・・。なんて思ってしまいます。

 

それにしても、このタクシーの運転手さん、安西さん。

こんなことをちゃんと覚えていてくれて、私にその時の情景を話してくださる。

そして、「お父さんはきっと、嬉しかったと思いますよ」と、そんな感情を

こちらの気持ちを汲み取りながら伝えて下さる。

 

思わず言いました。

「安西さん!!ありがとう!私、死ぬまで屋島タクシー乗ります!!」と。

まさか、タクシーの中でこんなことが起こるなんて。

まさか、タクシーの中で涙するなんて。

 

今朝、この話を誰かに言いたくて、

スタッフをつかまえては、「あのね、昨日ね、」と話をしています。

話すたびに、私も目がうるうる。

聴かされる方も目がうるうる。

 

診療中なんですけど・・・・・・(笑)

 

お昼休みに歯科衛生士の田中に言いました。

「お父さんは、大事にしてね。女子はお父さんには意外にきついことを言うけど

ケンカできるうちが幸せ。私なんてケンカしようにも、もうかなわないもんね」と。

 

社会に出て、結婚して、子供もできて、親がどんどん老いていったら

なんとなく、自分ひとりで大きくなったような気がしていました。

老いていく親にえらそうに説教してたこともありましたが、

やっぱり、それは違うな・・と思います。

 

ここまでなんとか生きてて、なんとか楽しく生きられているベースを作って

くれたのは親、なんですね。

我が家はハードな家庭環境でしたので、親を恨んだり、環境を恨むことも

若い頃がありましたが、それでもまあ、人を気持ちがある程度はわかるように育てて

くれたのはきっと親の無条件の愛情だったのかな、とこの年になって気が付きます。

というか、昨日、思いました(笑)タクシーの中で。

 

大事なことを忘れるなよ!ということを忘れていたから思い出させてくれたんでしょうか?

だって、そんなことを聴く機会ありませんもの。

今となっては、本人と話せませんから。

 

安西さん、ありがとう!

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